「みんなっ!出てきてくれ!」
宥が叫ぶと、全員が出てきた。
「うそ…だろ…」
そこには、衝撃的な光景が広がっていた。
なんと、草の怪物が電気の怪物を喰っていたのである。
「狩る!」
雄心が飛び出すと、毒矢を大量に射掛けた。
しかし、草の怪物はそれを軽々とかわす。
「怪物が…怪物を、喰うなんて。」
すると草の怪物が両手を掲げた。
その瞬間、雷雲が集まり、大量の雷を落とした。
全員咄嗟によけたが、それ以上に驚きがあった。
「草の怪物が…雷…!?」
動揺する怜をしり目に、柳は静かに分析していた。
「なるほど…怪物は怪物を食らうことでその能力を得られるのか…」
「ちっ」
雄心が小さく舌打ちした。
柳は草の怪物に突進した。
「柳!待て!草の怪物は教科書に載ってた…気がする!怪物の中で10本の指に入るってよ!」
楓真の静止を振り切り、柳が駆ける。
「うるさい!お前らじゃ足手まといだ!」
その瞬間、柳が弾き飛ばされた。
「ぐわっ!?」
全員が驚愕した。柳は最強だった。だが、それ以上に、捕食による能力奪取という新生態の力を存分に発揮する怪物が上回ったのである。
「こざかしいっ!」
柳は続いて拳を振りかぶった。だが、草のツルにからめとられて弾かれてしまう。
追い詰められる柳を救ったのは楓真だった。
「大丈夫か!?」
楓真は柳を受け止めると、後ろの方へと運んだ。
「バカ…お前らじゃ勝てない…」
すると楓真が珍しく怒鳴った。
「ごちゃごちゃうるせぇな!関係ないだろ!逃げられっかよ…目の前で仲間がやられてて、自分だけ尻尾を巻いてよ…」
柳は目を丸くした。
「…は?」
「あのな、別に俺らはお前のために戦ってんじゃねぇんだよ。お前含めたみんなのために戦ってんだ。だから、誰だろうと目の前でやられてるやつがいたら助けるのがふつうだろ。」
楓真の言葉に、怜が少し微笑んだ。
「お前はもっと俺らを信用してくれよ…」
楓真はそういうと、雄心に柳を渡した。
「宥!怜!行くぞ!」
「応!」
楓真は突っ込むと、叫んだ。
「超・必殺!金的&カンチョ―連打!威力アップバージョン!」
珍しく楓真が長めの棒を持っていた。
持ち前の速さで後ろに回り込むと、その棒を怪物の尻に向かって突き刺した。
「おらぁ!」
そこから、容赦ない楓真の金的連打が繰り広げられた。
しかし、草の怪物は影の怪物ほど簡単には倒れない。
楓真を振り払うと、目の前の宥めがけて突進した。もはや雷やツルを出す余力はない。確実にダメージは入っている。
その瞬間、草の怪物が悶絶した。
撒菱だ。撒菱は草の怪物の足に深く刺さった。
「おっらぁぁぁぁ!」
そこに怜の強力なハンマーが叩き落された。
雷鳴はやんだ。
怪物は塵のように消えてなくなった。
「そういや、怪物って死ぬと塵になるのよな。雄心が毒の怪物は例外だから毒を採取できたって言ってたけど。」
それからしばらくして、シェルターで5人が話していた。
「今回新たに判明した生態について、僕が本部まで報告に行ってきます。」
宥が名乗り出た。
「おいおい。ここは和歌山の北山村だぜ?大乱中は公共交通機関が停まるから大宮まで走りってこと?」
柳が止める。
「大丈夫です。僕はあの3年間でひたすら速く長く走る特訓をしてきました。斥候なら適任かと。」
すると怜も感心したように言う。
「確かに、宥は元から体力があるし、戦闘力も高いから安心ね。」
「よし、任せた!」
柳がゴーサインを出した瞬間、宥は飛び出していった。
宥はすさまじいスピードで駆け抜けていった。おそらく、宥は楓真よりも速くなっているだろう。
ただ、宥は自傷しなければ戦闘能力が得られず、自傷すれば速さが得られないという欠点がある。
それから数日、熱海を通りがかった宥のもとに、怪物が現れた。
「これは…!?」
そこにいたのは、体中が水の膜で覆われた怪物―
水の怪物だった。
(怪物の中で2番目に強い怪物が!?くそ…万事休すか!)
宥はそれでもあきらめなかった。
忍者刀を抜くと、手裏剣や苦無でけん制し、とびかかった。
しかし、一瞬であしらわれ、倒れてしまう。
(ああ。柳がいたら…またデコピンで倒してくれたかな…)
宥は追い詰められていた。
(それに、こいつは人型だし、楓真がいたら金的で…)
宥は少し笑った。
(怜…あの気の強さ、頼りになるんだよな。)
宥は多大なダメージを受けていた。それでも立っていられたのは、偏に仲間への想いがあったからだろう。
「みんな…もし僕が死んだら、どんな顔するかな…泣いてくれるかな…3年は一人でいたんだし、悲しんでくれないかな…」
水の怪物の圧倒的な拳が振り下ろされようとした。
ドン
その瞬間、水の怪物が弾き飛ばされた。
「大丈夫かい?」
宥ははじめ、比良だと思った。だが違った。
目の前にいたのは、比良よりもすこし若く見える、着物の男だった。
「だれ…ですか…」
「詳しくは素性を明かせないが、鷹司実篤というものだ。君は大宮を目指しているのか。いいだろう。送ってやる。俺は怪物を殺せないのでな、こいつは殺さずに北海道辺りまで送っとくぞ!」
宥はふっと目を閉じた。
次に宥が目を開けた時、そこはケガしたときに何度も寄った、本部の寮の保健室だった。
「お!宥!」
比良が顔を覗き込んだ。
「イテテ…お久しぶりです!」
「何があったか、教えてもらおうか。」
それから、宥はそれまでのことを洗いざらい話した。草の怪物と電気の怪物のこと、水の怪物のこと、鷹司実篤と名乗る男のこと、最後については比良なら知っていると思っていたが、知らなかった。あの後聞いた話だと、委員長も知らなかったらしい。
一方、逗填はアジトで過去に思いを馳せていた。
「フッ…フフ…平安の世…あの日の事は忘れないさ。関白 佐々木卿…!」
つづく
