第八話

大澤の護衛のもと、再び北山村に帰ってきた宥は、それまでの事を詳しく話した。
そして数日後―
この日も全員で怪物を屠っていた。
「なぁ。怪物って残り何体だ?」
「残り大体100体弱ってとこだろう。一日に全員合わせて100体は倒してるから。」
それを聞いた楓真が言った。
「じゃあ、もう溶融じゃん。今までは逗填にすら行けてないって聞いたけど楽勝じゃんか。」
すれうと柳が呆れた顔で言った。
「あのな…俺らは雑魚からぶっ倒してるから、残ってるのが強いやつばっかってことだよ。」
楓真の顔から血の気が引いた。
「ガチか…」
その瞬間、柳の携帯に着信があった。怜からだ。
「どうした?怜。」
「こっちがヤバい!これは…スマホの怪物がっ!宥も雄心も負傷してる!早く来てくれ!」
柳は一緒に話していた楓真を連れだってシェルターを飛び出した。
「こっちだ!」
柳は少し行った先の森に入った。
そこには惨状が広がっていた。
無残に放置された数名の一般人の遺体。傷を負って倒れる宥や雄心。傷を負いながらも戦い続ける怜。そして、その状況を作り上げた、スマートフォンの怪物。
すると楓真が飛び出した。
「おい楓真!どうするつもりだ⁉こいつは人型じゃないから金的はできないぞ!」
楓真は拳を振りかぶった。
(楓真が拳で攻撃!?戦闘スタイルが確実に変わってる!)
「おらぁ!画面叩き割ってやるよ!」
その拳はスマホの画面を確実に捉えた。
しかし、ヒビ一つはいらない。
その瞬間、スマホの怪物の画面が点いた。
そこには、楓真の連絡先が表示されていた。
「これって…俺の電話番号…」
着信ボタンが押された。
楓真の携帯に電話がかかる。
楓真はとっさにスマホを遠くに放り投げた。
その時だった。楓真の携帯はすさまじい勢いで爆発した。
幸い、誰もケガしなかったが、怪物の威力を目の当たりにした。
「こいつ…未登録怪物だ。」
そのころ、雄心や宥の治療が終わり、2人が復帰した。
すると柳が叫んだ。
「楓真。一度代われ!休まないと死ぬぞ!」
「くそっ」
楓真は素直に引いた。
そこで、倒れている一般人の中に違和感を覚えた。
(この人…テレビで出てた生物学者?だったっけな。)
すると、彼が持っていた本に目をやった。
(怪物の生態について…!?めっちゃ大事そう!でも本読みたくない…!くそ!)
楓真は本を手に取ると、それを開いた。しかし―
(あれ?)
その本はほぼすべて白紙だった。1ページしか書かれていない。
(仕方ねぇ…ここだけでも読むか…え?嘘…だろ…?)
楓真は目を疑った。
そこには、影の怪物と毒の怪物に関する記述のみが書いてあった。
『影の怪物―本来は影そのもので、実体がない。だが、足元に飛び込むことで実体への攻撃が可能になる。これも他の怪物と同様に死ぬと一瞬で塵になり、骨も残らない。』
『毒の怪物―毒を口から吐く。見た目はヒュドラに酷似。この怪物は例外で塵にはならないが、その毒は死ぬと分解されて無毒化される。』
その瞬間、スマホの怪物の攻撃が後ろにまで飛んできた。
本が裂ける。
「ああっ!」
柳が叫んだ。
「おい楓真!状況が変わった!悪いが戦ってくれ!」
「わかってらあ!」
楓真も宥も参戦した。
「はっ!」
宥の苦無は怪物に届いたが傷1つ付けられずに落ちた。
すると楓真が駆けだした。しかし、それも跳ね飛ばされる。
「くそっ!」
柳も飛びかかるがやはり傷1つはいらない。
その瞬間、楓真の背後から声がした。
「おぉ。やってるね。」
「!」
全員が見覚えのある男―
「と、逗填!?」
今まで2度、空に映し出された、不敵な笑みを浮かべる男。宿敵が今、目の前に現れた。
「な、なんで…」
「フフッ。ちょっと見に来ただけだよ。」
すると、スマホの怪物が柳を襲う。
「話してる途中じゃないか。邪魔をするなよ。」
逗填はスマホの怪物に触れた。
「裂」
その瞬間、スマホの怪物が裂けて塵になった。
「…」
全員が息を呑んだ。逗填は笑っている。
「僕の攻撃は怪力より呪力に近い、古い攻撃だからね。驚いたでしょ?」
柳が飛びかかった。しかし、それを一瞬で避けた。
「ははは。無駄だって。それに今はまだ君らを殺しに来たわけじゃないから安心しな。」
「誰が…!」
怜も臨戦態勢に入る。
「うん。いい感じに君たちの戦いが見られた。これで十分かな。じゃあね。」
逗填は踵を返した。
「待てよ。」
楓真が逗填の肩をつかんだ。
「どうしたんだい?僕はもう帰りたいんだが。殺すよ?」
楓真の手が震えていた。おびえている。あの楓真が。だが楓真は口を開いた。
「お前に一つ聞きたいことがある。」
「ん?」
「怪物の中に、人間の怪物はいるか?」
逗填が眉間にしわを寄せる。
柳も目が鋭くなる。
「…何でそれを聞くんだい?」
逗填の声のトーンが一段階低くなった。」
「いやぁ。気になっちまってよ。」
楓真が言うと逗填は少し微笑んだ。
「いるよ。」
楓真は驚愕した。いや。楓真だけではない。全員が驚愕した。
「…そうか。」
「では皆さん。ごきげんよう。」
その瞬間、逗填は姿を消した。
楓真は4人に向き直った。
「…」
沈黙が重い。

つづく

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