人間の怪物がいる―
その情報は同時に、委員会内部へ裏切り者を潜り込ませることが可能だったということを表す。
「なあ柳」
楓真はゆっくり口を開いた。
「ん?どうした。」
「俺って頭悪いか?」
「…まあ、普通の18歳よりは…ってとこか。」
「だよな…やっぱ俺の思い過ごしだよな。」
「は?」
怜が怪訝な顔をする。
柳は楓真に言った。
「どうした。何かあるなら言え。」
「…」
楓真は押し黙った。
「おい。どうした。」
柳が詰める。
「…絶対…間違えてるから、怒らないでくれよ…?」
「ああ。」
楓真はおそるおそる口を開いた。
「なあ雄心…」
全員の視線が雄心に向いた。
「お前…人間の怪物じゃないのか…?」
は―?
全員が口をあんぐりと開けた。いや。柳だけは分析していた。
「なあ楓真?気でもおかしくなったのか?こんなチャラ男が怪物なわけないでしょ。」
怜はあきれたように言う。
柳が口を開く。
「楓真。そういうからには根拠があるんだろ?」
「…実は。」
楓真は全てを話した。生物学者の本の事を。そこに『毒の怪物の毒は死ぬと無毒化される。』と書いてあったこと。それなのに雄心は毒の怪物の毒を毒矢にしていたこと。
そしてそこから自分の仮説を話した。
「もし、雄心が人間の怪物だとしたら、人間の怪物が毒の怪物の核を喰ってその能力を毒矢という形で得ているとすれば合点がいく。」
全員が目を見開いた。
「確かに…雄心。反論はあるか…」
柳が言いかけた瞬間、雄心の刃が首元に迫った。
柳はとっさによけたが首元を少し怪我した。
「雄心!?まさか本当に!?」
「ああ!そうだよ!俺としたことが…草と電気の一件で怪物の共食いが判明してしまった…気を付けていたのに。」
「そうか!お前がやたらとどめを担当したがったのは確実に殺して共食いの場を見せないためか!」
雄心は手をかざした。
「こうなりゃ隠す必要もない!毒の能力を全開放する!」
その瞬間、雄心の手から毒がすさまじい勢いで放たれた。
全員避けたが、後ろに生い茂っていた森が死んだ。油断できない。全員が悟った。
「おいお前ら!もうこいつは補佐官でも仲間でも何でもない!今まで殺してきた怪物と同じように…躊躇せずに殺せ!」
柳は唇をかみしめながらそう言った。
すると楓真が飛び出した。
「へへっ!相手が人間なら金的は楽勝だろ!」
しかし雄心…いや、人間の怪物はそれを軽々と避けた。
「本当にお前は芸がない。金的とカンチョーしかできないのか?」
その真上から、怜のハンマーが振り下ろされる。
「ははっ」
それもあっさりと避ける。
覚醒した宥も撒菱を撒いて忍者刀で突撃する。
「遅い遅い」
人間の怪物は全てを避けていく。
宥の猛攻を抜けた人間の怪物に待っていたのは柳の怒涛の攻撃だった。
「死ね!人間の怪物!」
「ならこっちもぶっ叩いてやるぜ最強!」
人間の怪物は拳を繰り出しながらも余裕綽々で柳の攻撃を避ける。
一方の柳はすんでのところで避けるばかりか、攻撃すらまともに繰り出せない。
「勝負あったな!」
人間の怪物の容赦ない拳が柳の顔面を捉えた。
柳が吹き飛んだ。
「雑魚が!死ねぇ!」
人間の怪物が柳に飛びかかった瞬間、後ろから楓真が飛び出した。
「隙あり!金的行きまーす!!!!」
すると人間の怪物はとっさに後ろを向いて楓真の足をつかみ、彼の股間を蹴り上げた。
「お前だけが金的を打つと思うなよ!」
楓真は股間を手で押さえながら言った。
「いっっっってぇ!!!!!!!ずりぃぞお前!さっき芸がないとか言ったくせに!」
「金的しかできないお前と違って俺は金的以外の攻撃ができるからな。」
つづけて人間の怪物は楓真の背後に回ると、指で楓真の尻を突き上げた。
「ぐわぁぁっっ!!!!!!!カンチョーまで…」
楓真が崩れ落ちた。
人間の怪物は笑いながら言った。
「ここいらで辞めといてやろう」
そう言って走り去っていった。
「く…そ…」
それから数日後、シェルターで怜と宥と柳が会話していた。
「3年前、初日に放たれた怪物が人間の怪物だったってわけか。」
「あいつにやられた後も怪物は殺しまわってたから、人間の怪物もいれて残り4体ってとこかしら。」
「そういえば楓真は?」
すると宥が言った。
「楓真くんなら特訓するって部屋に閉じこもって…」
その瞬間、部屋から楓真が出てきた。
「よう…」
楓真の顔つきが変わっていた。目に決意が宿っている。
その瞬間、宥が振り向いた。
「来た。炎でも水でも人間でもない。」
全員がシェルターの外に出た。
そこいたのは、爆弾の怪物だった。前回の逗人大乱で初めて確認され、委員会本部の近く―大宮駅前で最強たちを殺した怪物だ。
「こいつが…前の最強を…」
爆弾の怪物は爆弾を無限に生成できる。
彼らは気づいていなかった。ここからしばらく、全員で座って話せるようなときはやってこないということを。地獄の怪物連戦の始まりである。
つづく
