第四話

「影…か。」
比良は静かに言う。
「比良。影って…」
大澤が言う。
「ああ。怜はどこだ。」
そのころ、柳を含む5人は出撃準備を整えていた。
「影って、もしかして怜が…」
「ああ。比良さんが助けてくれたんだけど、一人じゃ斃せないって言って…」
「比良さんが斃せないってどんな…」
そこに比良が現れた。
「みんな。準備は万端かな。」
「はい。」楓真。
「おうよ。」怜。
「うん。」宥。
「行こうぜ!」雄心。
「早く行こう。」柳。
全員が心を一にすれば倒せる。
誰もがそう思っていた。それがゆえに、この後巻き起こる地獄に、誰も気づいていなかった。

「今回の編成は僕と大澤と、君たち5人。」
「Sランクってそこまでしないと斃せないんですか?」
楓真の質問に、比良がすかさず答える。
「柳がいればまず安心だが、相手が手数で攻められると時を要するからな。」
「俺一人送って死体で帰ってくるとでも思ったか?」
柳が吹っ掛けると、大澤が口をはさむ。
「万が一を考えなさい。」
柳がきまりの悪そうに食い下がる。
そこに代わって再び楓真が口をはさむ。
「でも実際、柳は鏖殺の最強ランクを秒殺ですよ?いけるでしょ。」
その瞬間、比良の顔がこれまでになく険しくなった。
「楓真。それに皆。よく聞き給え。今回戦闘する影の怪物は鏖殺なんて足元にも及ばない。」
「…え?」
比良は続けて言う。
「まだ出発まで時間があるな。少し話をしよう。」
比良は近くにあったホワイトボードを準備した。
「まず。一番強い怪物は何かわかるかい?」
すると、楓真が手をあげた。
「これ比良さんから聞いた!炎の怪物ですよね!?」
「その通り。では、二番目はわかるかい?」
楓真は頭を掻いた。
誰も答えられなかった。
「確かに二番目って…?富士山は有名なのに北岳が知名度低いみたいな?」
怜がいうが、楓真はさっぱりわからない。
「正解は、水の怪物だ。」
「水⁉」
すると大澤が口をはさむ。
「実は比良の先祖は、前の逗人大乱で水の怪物に一族屋敷ごと皆殺しにされた。」
楓真が驚いた。
「マジかよ…」
「比良さん。三番目って何ですか?」
「その話だがね、その前に一応伝えておく。これは今までも同じだが、この怪物は前回までの逗人大乱で委員会側が把握しているものだけだ。」
全員の顔から血の気が引いた。
そこに石森がやってきた。
「そろそろお時間です。」
「あら。生きてたの。りょーかーい。」
比良はホワイトボードを消すと、近くの机に合ったナイフを手に取った。
「んじゃ、ぼちぼち行きますかー」
「押忍!」

怪物の出現の報告があった場所には、不気味な怪物がいた。
「こ、これが…」
「ああ。影の怪物さ。」
その怪物はゆっくり立ち上がると、楓真たちを見下ろした。
「俺らがやったるよ。どいてな。」
比良と大澤が前に出た。
大澤は慣れた手つきで眼鏡を組み替えると、ライフルを構えた。
比良もナイフを取り出し、影の怪物に駆け出す。
影の怪物が拳を振り上げる。
大澤がその拳めがけて銃弾を放つ。比良はその隙を狙って懐へと攻め込む。
銃弾は確実に拳を射抜いた。
比良も懐に飛び込んだ。
しかし。
ドン
轟音とともに、比良は地面にたたきつけられた。
大澤は驚きを隠せないでいた。
「嘘…だろ…。拳が…再生してる…!?」
大澤は焦らず次の弾を装填した。
「比良ァァァァッ!」
その一撃は寸分の狂いなく、影の怪物の中央を貫いた。
だが次の瞬間には大澤のライフルが真っ二つに叩きおられていた。
大澤の目の前に影の怪物が立っている。
そこに柳が飛び込んで攻撃を仕掛けた。
「比良さんを傷つけたのは万死に値する。」
柳の慈悲なき拳が叩き込まれる。
その瞬間、柳は確信した。
(そういうことか!)
「お前ら!こいつ影なんだ!攻撃が透過される!」
土煙の中から比良がはい出してきた。
「比良さん!」
「お前ら…逃げ…ろ…」
すると柳は叫ぶ。
「怜!宥!俺と一緒に戦え!雄心は後方援護!楓真は比良さんを援けろ!」
「「「「応!」」」」
「みんなで…みんなで生きて帰るぞ!!!!」

つづく

タイトルとURLをコピーしました